広辞苑によると、「輪」は、長いものを曲げて丸くしたもの。
車軸を中心に回転して車を進める円の道具。
「環」は玉の輪。
輪の形を成す物とされています。
「輪」の項に「環」は類語として示されており、これらの意味が非常に似ていることを表しています。
しかし漢字の成り立ちを見れば、その成立の仕方や用途に微妙に違いがあります。
今回はその違いについて調べてみましょう。
「輪」の意味
字義は、主に、車の「輪」、車の様に丸いもの、車、車を数える言葉です。
この字が車の発明によって出現し発展してきたことがわかります。
歴史的にみると、車輪の発明は、古代の人類最大の発明の一つだと言われます。
この発明が発展して歯車の発明につながっていきました。
歯車は、原始的コンピューターであると言われています。
「環」の意味
「環」の字義は、「たまき」や「璧(へき)」の一種、穴の直径が周辺の幅と等しいものをいいます。
また、「わ」、「かん」、輪状のもの、「めぐる」という意味です。
これらを見ると、「環」は、「たまき・古代の腕飾りの一種」、または、「璧・中央に孔のある円盤状の玉」と関係ある文字であることが判ります。
「たまき」や「璧」は、古代の上流社会を象徴する装飾具でした。
とくに、「璧」は、古代中国王朝の地方官に下賜され、その地位と権力を保障したものです。
この「璧」から「完璧」という言葉も生まれました。
「輪」と「環」の解字と用途
「輪」は、解字すると、左右に部首が分かれます。
左側の「車」は、音符を表し「リン」と発音させます。
右側は、「筋道が立つ」という意味を表します。
車の矢が放射線状に秩序を持って並んでいることが、このような意味を生み出したと考えられます。
環は、解字すると「王」=「玉」と右側の部首にわかれます。
右側が「めぐらす」という意味を持っています。
両字とも、円を表すとき使います。
「輪」と「環」の歴史的意味
「輪」も「環」も円を表していますが、「輪」はその円の形状をより表し、「環」は動作的な要素に特化して、輪状に巡らすことを意味しているように思います。
「輪」は、車輪をイメージしていることは言うまでもありません。
古代の大発明は、それらがいつ発明されたかわからないのですが、古代中国に於いては、兵馬俑の遺跡でも分るように、秦のころには盛んに戦車が使用されていました。
一方、「環」は本来、「たまき」や「璧」を表したものと考えられますが、それが動作を表すものに変化していったのは、「たまき」の表す「玉」に関係があるのではないかと思います。
古代「玉」は、「命・いのち」を表しました。
「たまき」は、腕輪で二の腕の上部につけたといわれます。
心臓の感覚を感じられる部分です。
血が全身を巡る感覚が、「巡る」という字義を生み出したのではないでしょうか。
両字とも、歴史が感じれれる文字です。