- 必至は「絶対に避けられないこと」。
「確実」と言い換えると分かりやすい
- 必死は「死ぬほどの覚悟で取り組むこと」。
「一生懸命」と言い換えると分かりやすい
同音異義語は意味も紛らわしいものが多いのですが、「必至」と「必至」ははっきりと意味の違う珍しい言葉です。
必至の意味
必至とは「絶対に避けられない」ことを意味します。
漢字をひとつずつ見ると「必ず」「至る」と書きますね。
「至」にはたどり着くという意味があるので、
どんな手を打っても必ずその状況にたどり着くだろう
という強い確信を持って使われるのが必至です。
必至の使い方と類語
「必至」はその見通しが決定的なら良いことにも悪いことにも使われます。
「内容の良し悪しに関係なく確実な未来を指す言葉」と考えるといいでしょう。
また「必至」にはこんな類語があります。
- 必然(ひつぜん)……必ずそうなること
- 不可避(ふかひ)……避けられないこと
どちらも表現としては固めですね。
「必死」と区別するなら、「確実」と言い換えてみるのがいちばん分かりやすいかと思います。
それを踏まえて、例文を挙げていきますね。
必至の例文
- あの店の福袋は豪華だから、今年も売り切れ必至だね。
- 彼は我が社にとって大きな戦力だ。
今後の昇進も必至だろう。
- 業績悪化が続けば、事業の見直しは必至だ。
- 総理大臣の失言で、野党の反発は必至と見られます。
どれも「必至」=「確実」と言い換えても違和感がありません。
「必至」はテレビニュースでもよく使われる言葉なので、意味を覚えておくと聴き取りもスムーズになりますよ。
必死の意味
次は「必死」について見ていきましょう。
こちらも「必ず」「死ぬ」と書きますが、日常で使う限りでは、本当に死んでしまうことはありませんよね。
そもそも死んでしまったら何もできません。
なので「必死」は主に次のような意味合いで使われます。
- 失敗したら死ぬ覚悟で取り組む
- 成功のためには力を使い果たして死ぬ覚悟で取り組む
つまり「命をかけて成し遂げるんだ」という強い気持ちを表す比喩なんですね。
必死の使い方と類語
「必死」という言葉は日常会話でも定着しています。
そのため命をかけるほど深刻な場面でなくても、気軽に使われるのが特徴です。
- 必死に話題を探す
- 必死に追いかける
「必死」の類語には「命がけ」や「死にもの狂い」が挙げられますが、それだと日常会話では違和感がありますね。
「頑張る」では少し弱いし「命がけ」では大げさ……そんなとき「必死」はちょうどいいさじ加減なのかもしれません。
また「必至」と区別するには、「一生懸命」と言い換えてみると簡単です。
それを踏まえて例文を見ていきましょう。
必死の例文
- この前山で熊に遭ったんだ。
必死に逃げて助かったよ。
- オリンピックへ向けて選手たちは必死の練習を重ねている。
- 必死に英語を勉強してきたおかげで、海外の新プロジェクトを任されることになった。
どの例文も「必死」=「一生懸命」と言い換えられますね。
熊以外は実際に命を落とすことはありませんが、本人にとっては最大限の努力が必要な場面で使われるのが「必死」です。
必死にはマイナスイメージもある?
気軽な言葉として定着した「必死」ですが、本来のニュアンスとは違う使い方も広まっています。
例
- あの子、合コンはいつもばっちりメイク。
必死だよね。
- 同期のB君は課長に取り入るのに必死だ。
この「必死」からはどんな印象を受けるでしょうか。
気合いの入れようをうとましく感じている、もしくはからかっていると取れるのではないでしょうか。
そんなつもりがなくても、文脈や言い方によっては誤解されてしまうかもしれません。
人に向けて「必死」を使う場合は、失礼にあたらないか十分注意してくださいね。
クイズに挑戦
必至と必死では意味が大きく違うことが分かりました。
では最後にクイズ形式で確認してみましょう。
問題
(1)ひっしのプロポーズが功を奏して、彼女に良い返事をもらえたよ。
(2)今週のバスケットボールの試合は、各チームとも実力があるだけに混戦必至だろう。
(3)高齢の両親のために、実家の改築はひっしだ。
(4)経理部のA部長がひっしの形相で社長室に入っていった。
解答
(1)必死
君と結婚できなければ死んでしまう!実際に命を落とすことはなくても、熱意は伝わりますね。
(2)必至
こちらは必ずそうなることを予測しています。
「実力のある選手揃いなので、点を取ったり取られたりと勝負の行方が読めない試合になるのは間違いない」という意味です。
(3)必至
高齢になると段差につまづいたり、暑さ寒さが身にしみたり。
そんな両親に快適に暮らしてもらうには、改築が絶対に必要になると予測しています。
(4)必死
A部長に何があったのか?この一文だけでは分かりませんが、緊迫した状況であることはうかがえますね。
ここではその強い気持ちが顔に表れているという意味で「必死」が正解です。