「渡る」は、海や川の一方から他方へ移動することです。

他国へ行ったり物が渡来したりする場合にも使います。

「海をわたる」「橋をわたる」「中国から渡ってきた陶器」のように使います。

「亘る」は、広い範囲にくまなく及ぶことや、在る時間・期間が途切れることなく引き継がれることを表します。

「細部にわたり調査数する」「再三にわたって警告した」「この論文は、東西にわたる見識を示します」のように使います。

「渡る」も「亘る」も英訳する場合、「Cross 」で訳されます。

「渡る」の意味

「渡る」は、「海・わた」と同源の言葉と考えられます。

海のような幅広い空間・時間を越えてゆくことです。

万葉集(13)「黒馬に乗りて川の瀬を七瀬わたりて」とあります。

「アメリカに渡る」「線路を渡る」「橋を渡る」のように使います。

一定の過程を経て一方から他方へ及ぶことです。

「亘る」とも書きます。

源氏物語(若菜上)「朱雀院より渡り参れる琵琶・琴」とあります。

徒然草「この戒め、万事に渡るべし」とあります。

「交渉は2日に渡って行われる」「私事にわたって恐縮ですが」「洋の東西に渡る知識」のように使います。

「土地が人でに渡る」「資金が渡る」のように使います。

「在る」行く」「来る」の尊敬語です。

「~であらせられる」「~でいらっしゃる」という意味です。

古風で改まった言い方です。

一般的に仮名書きです。

平家物語(6)「その時、未だ中宮にて渡らせ給ふ」とあります。

「美男にわたらせられる」のように使います。

他動詞の連用形に付いてその動作が幅広い場面にわたって行われたり、時間的に長く続いたりすることを表します。

「一面に広い範囲に及ぶ」という意味です。

源氏物語(賢木)「紅葉のやうやう色づき渡りて」とあります。

「晴れ渡る」「知れ渡る」「渡る世間に鬼はなし」のように使います。

「亘る」の意味

「亘る」は、「亙る」とも書きます。

「亘る」は、世の中を生きていくことです。

暮していくことを言います。

「世間をわたる」「渡(亘)る世間に鬼はなし」
在る範囲までに及ぶ、また、広い範囲にくまなく及ぶことです。

「細部にわたり調査数する」「再三にわたって警告した」「この論文は、東西にわたる見識を示します」
在る時間・期間が途切れることなく引き継がれることです。

「5時間にわたって討議する」「一か月にわたって船の旅を楽しむ」「10年にわたる調査の結果」

「渡」と「亘」の字義と 解字

「渡」の字義(漢字の意味)は、「わたる」「わたす」「渡し場」です。

解字(漢字の解説)に於いて、「渡」は「水+度」で構成されます。

「度」の部分は、「物差しを渡して測る」という意味を表しました。

これにより、「水を渡る」の意味を表します。

「亘」の字義(漢字の意味)は、「もとめる・めぐる」「のべる」です。

解字(漢字の解説)に於いて、「亘」は象形文字です。

物の旋回する形にかたどり、「巡る」の意味を表しました。

「亙・わたる」の字形と混同して「わたる」の意味も表すようになりました。

川や海や橋を渡る場合は「渡る」を使い、物がごとが広い範囲に及ぶ場合や、時間が途切れなくつづく場合は「亘る」を使います。

「わたる」は一般的に「渡る」と書きます。

以下のような場合は、「渡る」で表します。

隔てているものを越えて向こうに移ることです。

「渉る」とも書きます。

「川を渡る」と使います。

橋や通路を通って向こう側に移ることです。

「廊下をわたる」と使います。

遠く隔たった所へ行くことです。

「移民としてブラジルに渡る」と使います。

しかし、以下のような場合は、「亘る」「亙る」とも書きます。

世の中を生きていくことを表します。

「渡る世間に鬼はなし」と使います。

また、広い範囲にくまなく及ぶことです。

「細部にわたり調査数する」と使います。

ある時間・期間が途切れることなく引き継がれることです。

「5時間にわたって討議する」と使います。

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