「前略」は、文章を引用する場合などで、前の部分を省略することです。

手紙の冒頭に記す語です。

英文では、「前文の省略」の意味の場合「dispensing with the preliminaries」で表されます。

「dispense」は「扱う」「分配する」「投与する」「執り行う」「免ずる」という意味です。

「preliminary」は「予備」「下ごしらえ」「予備行為」「前置き」という意味です。

英語の手紙では、「前略」に相当する表現そのものはありません。

しかし、以下のように表すことができます。

「I hasten to inform you that・・・」「Just a line to tell you that・・・」です。

「hasten」は「急ぐ」「せきたてる」という意味です。

「中略」は、中間部分の語句を省略することです。

英語では、省略はピリオド3つで示します。

「我が党の存亡は(中略)この件にかかわっている」は
「It says “The life and death of our party・・・ dependent on this matter.”」です。

「彼の供述は長いので中略して読み上げます」は
「Please allow me to omit part of his statement, as it is too long to read in full.」です。

「後略」は、文章などで後の部分を省略することです。

英語では「omit the rest」「omit the last part」で表されます。

「前略」の意味

「前略」は、以下のような意味です。

①文章を引用する場合などに前の部分を省略することです。

②手紙の冒頭に記す語です。

「前文失礼します」の意味です。

時候や安否の挨拶を省略して、ただちに本文に入る場合に用います。

「早々」「不尽」などの語で結びます。

<前の漢字>
字義は「まえ」「すすむ」「さきだつ」です。

解字に於いて、元の漢字は、「?(刀)+止+舟」で構成されます。

「止」の部分が「葦・あし」を表したことから、もともとは「切りそろえる」を意味しました。

しかし、「止+舟」の部分が「進む」を表し、転じて、「まえ・前」を意味するようになりました。

「止+舟」の部分が「まえ・前」を意味するようになったので、後に「切りそろえる」という意味の場合には「刀」を付して「剪」の文字を新たに作りました。

「中略」の意味

「中略」は、引用文などで、中間の語句を省略することです。

類語・関連語には「上略」「下略」「前略」「後略」があります。

<中の漢字>
字義は「なか」「うち・なか」「ほどよい」「中国の略」です。

解字では、この文字は指事です。

ある物を一線で貫いて「うち・内」を表しています。

甲骨文字では、「軍隊の中央に立てる旗の様」を表して「うち」を意味します。

「中」を漢字の一部に使用している漢字「忠」「仲」「沖」などは、「なか」の意味を共有しています。

<指事>
六書(りくしょ)の一つです。

事柄や数など抽象的な概念を象徴的に記号化して文字とする方法のことです。

「一」「二」「上」「下」などがあります。

「後略」の意味

「後略」は、文章などで後の部分を省略することです。

引用文を記述する時、後の部分を省くことです。

反対語は「前略」です。

<後の漢字>
字義は「あと・うしろ」「あと・のち」「おくれる」「のちにする」です。

解字では、「彳+幺+夂」で構成されます。

「彳」の部分は、「道を行く」を表します。

「幺」の部分は、「糸でつなぐ」を表します。

一説に「幺」は「幼い」を表すともいいます。

これらにより、「道を行くとき糸が絡まって歩みが遅れる」を表し「おくれる」を意味します。

または、「幼いために歩みが遅くなる」を表し「おくれる」を意味します。

<略の漢字>
字義は「治める」「ゆく・見回す」「侵す」「奪い取る」「うつ・征服する」「はぶく」「はかりごと」「知恵」「みち」「のり・法則」「さかい」「かなめ」
「ほぼ・おおよそ」「粗い」です。

解字では、「田+各」で構成されます。

「田」の部分は、「農業の生産地」を表します。

「各」の部分は、「行く・いたる」を表します。

これらにより、「自分の生産地に行き、治める」、または、「他人の生産地へ行って侵す」を表します。

転じて、「はぶく」も意味するようになりました。

「前略」は 文章を引用する場合などで前の部分を省略すること、「中略」 は中間部分の語句を省略すること、「後略」は、 文章などで後の部分を省略すること
「前略」「中略」「後略」は、類語です。

共通する意味は「文章の一部を省略すること、また、そうしたということを表す語」です。

「前略」は、それより前の部分を、「中略」はその中間部分を、「後略」は、その後の部分を省略することを表します。

「前略」は、手紙で時候の挨拶などの前文を省略するという意味です。

「冠省」は、「前略」の改まった言い方です。

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