「悲しい」や「哀しい」は、自分の力ではとても及ばないと感じる切なさを言う言葉です。
悲哀も愛隣も感情の切ないことを言います。
泣きたくなるほどつらいことです。
心が痛んで耐えられない様です。
痛ましいことです。
万葉集(13)には、「沖つ藻にこやせる君を今日今日と来むと待つらむ妻しかなしも」とあります。
「妻に先だたれて悲しい」「悲しい調べの曲」「悲しい色やね・1982年・上田正樹のシングル」のように使います。
特に「哀しい」と書く場合、「かわいそうで哀れに思う気持ち」を表します。
「悲しい・哀しい・かなしい」の意味
「悲しい・哀しい」は、心がひどく傷んで「泣きたくなるような思いがすることです。
また、そのように思わせるさまを指します。
反対語は、「うれしい」です。
「友の死が悲しい」「心が張り裂けるほど悲しい」「別れは悲しい」「悲しいことに彼は出て行ったまま帰らなかった」「悲しそうに歌う」のように使います。
また、「情けなくて残念な思い」のことです。
また、そのように思わせる様を言います。
「簡単なことができなくて悲しい」「現実を直視しなくてはならなくて悲しい」「善悪の区別もつかないなんて悲しい」のように使います。
「かなしむ」は、悲しいと感じることです。
悲しく思うことです。
もともとは「愛し・かなし」とも書きました。
肉親や恋人などに対する切ない気持ちを言いました。
英訳する場合、「Sad/ miserable/ sorrowful 」で訳されます。
「哀しい・愛しい・かなしい」の意味
「哀しい・愛しい」は、「身に染みて愛しい」「可愛くてたまらない」という意味です。
万葉集(18)「妻子(めこ)見ればかなしくめぐし」とあります。
伊勢物語「ひとり子にさへありければかなしうし給ひける」とあります。
また、興味深くて強く心惹かれるさまです。
万葉集(7)「神さぶる磐根こごしきみ吉野の水分山(みくまり山)見ればかなしも」とあります。
さらに、「見事」「あっぱれ」という意味です。
古今著聞集(17)「かなしくせられたりとて見あざみけるとなむ」
加えて、「残念だ」「しゃくだ」という意味です。
宇治拾遺物語(5)「きゃつにかなしう計られぬるこそとて」とあります。
「貧苦である」「貧しく同情される」という意味です。
玉塵抄(3)「天子の倉に物をいれては かなしい民に施し」とあります。
「どうしょうもなく恐ろしい」という意味です。
問わず語り「まめやかに、化物者の心地して、あららかに『あな、かなし』といふ」とあります。
「悲」「哀」の字義と解字
「悲」の字義(漢字の意味)は、「かなしむ」「かなしい」「かなしみ」「仏教用語・慈悲」です。
解字(漢字の解説)に於いて、「悲」は「心+非」で構成されます。
「非」の部分は、左右に分かれる」という意味です。
「心が引きちぎられ、いたみ悲しむ」という意味を表します。
「哀」の字義(漢字の意味)は、「かなしい」「あわれむ」「あわれ」「うれい」です。
解字(漢字の解説)に於いて、「哀」は「口+衣」で構成されます。
「衣」の部分は、「まとう」という意味です。
同情の声を寄せ合う様から「かなしむ」「あわれむ」という意味を表します。
「哀」は、「悲」の美的かつ情緒的表記です。
特に「哀しい」と書く時は、「かわいそうで哀れに思う気持ち」を表します。
「かなしい」は、「好ましくない事態に接し、心が痛む様」です。
「哀」は、「悲」の美的かつ情緒的表記として使うことがあります。
「切ない別れを哀しむ」「哀しい予感・吉本ばなな著」のように使います。
杜甫の登高詩には、「風急天高猿嘯哀・風急に譚高くして猿嘯哀し」とあります。
特に「哀しい」と書く時は、「かわいそうで哀れに思う気持ち」を表します。