やや大雑把に言うと、「はなはだしい」は程度、「おびただしい」は数量についての表現です。
はなはだしいは、何か良くないことについて「とても程度がはげしい、またはひどい」ということです。
おびただしいはたいてい「とても数が多い」ということで、「はなはだしい」のように良くない事というニュアンスはありません。
ただしまた、「おびただしい」には「はなはだしい」と同じ意味、つまり程度がひどいという意味を表す場合や、とてもさかんであるという意味の場合もあります。
「はなはだしい」(甚だしい)の意味
はなはだしいの意味は、何か良くないことについて「とても程度がはげしい、またはひどい」ということです。
例えば、はげしく壊れたことを「はなはだしい損傷をうけた」と表したり、とてもひどい勘違いを、はなはだしい勘違い、と表したりします。
「勘違いもはなはだしい」などといった言い回しで使われる事も多いのがこの言葉の特徴でもあります。
「おびただしい」(夥しい)の意味
おびただしいの意味は、まず第一に「とても数が多い」ということでたいていはこの意味です。
おびただしい鳥が飛び交っていた、などと使いますし、「おびただしい数の~」という表現もよくあります。
「おびただしい羽音」といった、数でなく量が多いといった方がふさわしいような場合にも使われることもあります。
また、はなはだしいと同じ意味の事もあり、「怯えることはおびただしい」といった使い方もあります。
さらに「とてもさかん」という意味もあり、古典には「おびただしくめでたし」という表現もありますが、現代ではあまり見かけないようです。
「はなはだしい」と「おびただしい」の用法、用例
「はなはだしい」の用例:「ロシア革命が大正17年に起こった」というのは勘違いもはなはだしい。
ロシア革命は西暦1917年で大正6年だし、そもそも大正は15年までしかないのだから。
「おびただしい」の第一の意味の用例:星雲はおびただしい星の集まりである。
鳥インフルエンザ発生時に対応が遅れると、おびただしい鶏を殺処分する結果を招く。
「おびただしい」の第二の意味の用例:せいぜい10分かと思っていた待ち時間が3時間にも及ぶと、さすがに手持ち無沙汰のことおびただしい。
やや、ややこしい「はなはだしい」と「おびただしい」
「おびただしい」には「はなはだしい」と同じ意味もあるので混乱しやすいですが、たいていは「おびただしい」は数量について、「はなはだしい」は何らかの性質の程度についてのことだと思うと覚えやすいです。
そのうえで、「おびただしい」には「はなはだしい」と同じ意味の場合もあると覚えるのがいいでしょう。
ただしこの意味で使われる頻度は低いので、「怯えることおびただしい」などと使うと間違いだと思われたり、「それをいうなら、はなはだしいでしょ」と突っ込まれる恐れもあります。
なお多くの場合、「はなはだしい」は「ひどい」に、「おびただしい」は「多い」とか「たくさんの」に言い換えられます。
文章の調子を整えるためこの字数がちょうどよいと言う場合や、より文語的な格式ばった表現にしたい場合に「はなはだしい」、「おびただしい」という語が選ばれると考えてよいでしょう。