「弊社」は、自分の会社を相手より低く見なければいけない場面で自分の会社を表現する言葉です。
「へりくだった表現」「謙譲語」にあたります。
「当社」は、同じ会社の者同士や、自分の会社を相手と対等もしくは上位に見てよい場面で自分の会社を表現する言葉です。
対社外であれば基本は「弊社」
日本には昔から「相手を持ち上げ自分を低くするのが美徳」という精神があります。
その背景ゆえに、自分を相手と同等のように表現すると(悪気はなくても)誠意が足りないように思われるのです。
会社についてもそれは同じことで、たとえ長い付き合いのある会社が相手であっても、形式的にはへりくだった表現(「弊社」という言い方)が必要であると言えます。
同じ会社の者同士であれば「当社」
「相手を持ち上げるのが美徳」という考え方は、逆に言えば「持ち上げる必要のない場面で持ち上げるのは不適切」ということになります。
自社内であっても上司や社長に報告をする場面ではついへりくだりの気持ちが出てしまうものですが、ここで「弊社」という言葉を使うのは「私はこの会社に所属してはいるがたいした会社ではないと思っている」という意思表示になってしまうのです。
また、自分の会社に損害が生じた場合はその原因となった会社に対してへりくだる必要はなく、抗議する際は「当社」という表現を用いるようです。
「弊社」「当社」の別の言い方
「弊社」=「小社」
自分の会社を「小さいもの」と表現することで、逆説的に相手の会社を「大きいもの」と見ている気持ちを表す言い方です。
「当社」=「わが社」
自分のことをストレートに「私」と言うのと同じで、相手に対し対等の立場であるという気持ちを込めた言い方になります。
重要なのは相手の会社を尊重する気持ち
「弊社」と「当社」を使い分けるにあたり、根底にあるのは「相手を持ち上げるのが美徳」という精神です。
常に相手の会社に感謝と尊重の気持ちがあれば、自然と「弊社」という表現が出てくるでしょう。
そしてだからこそ、持ち上げることを排した「当社」という表現を使うことが、「あなたは仲間」もしくは「あなたに抗議します」という意思表示になるのです。