「朝令暮改」の元の意味は、朝に出した指示が夕方には違う指示に代わっているということ。
つまり指示に一貫性がなく、ころころと変わることを表します。
「朝三暮四」とはぱっと見、あるいは深く考えずにあることを違うこととして認識するも、実は同じであることに気が付かないことを表します。
別に、口車にのせて人をだます、という意味もあります。
「朝令暮改」の意味
「朝令暮改」とは前漢の歴史書『食貨志』に載せられているチョウソから文帝への忠告文を由来とする言葉です。
当時、前漢では農民が頻繁に変わる命令と搾取によって苦しめられていました。
どうにもならなくなった農民たちが農地を離れ、流れ者となるというケースが多発していました。
チョウソはそのようなことはほおっておくと大変なことになると文帝に訴えました。
この、命令が頻繁に変わる一貫性のない様を「朝令暮改」といいます。
「朝三暮四」の意味
中国の戦国時代に書かれた『荘子』そして、『列子』出典の言葉です。
意味合いとしては、荘子と列子で表すものが少しずつ異なります。
荘子においての「朝三暮四」は、深く物事を見ることなく自分の価値観やぱっと見の浅はかな見識に縛られ、結局は同じということに気が付かないこと、の意味を表します。
列子においての「朝三暮四」は、うまいことを言って人をだますこと、の意味です。
「朝三暮四」にまつわる寓話二つ
朝三暮四はその出典元により、異なる意味を持ちます。
意味合いの元となっている寓話をそれぞれご紹介したいと思います。
まず「荘子」の寓話から。
あるところにサル使いがいました。
サル使いはサルたちに「朝は三つ、夜は四つの木の実を」あげよう」と言いました。
するとサルたちは怒りました。
そこでサル使いが「朝に四つ、朝には三つの木の実をあげよう」と言ったところ、サルたちは喜びました。
というお話です。
次に「列子」の寓話を。
サルをとてもかわいがって買っている男がいました。
男は貧乏になり、サルのえさを減らさなければならなくなってしまいました。
男はエサを減らされたサルが言うことを聞かなくなることを恐れ、(荘子の寓話に出てきた)話をしてサルをだましたというお話です。
言葉の裏に歴史あり
朝令暮改と朝三暮四、使われている漢字や全体的なイメージがとても似ているので、うっかりすると読み間違えてしまいそうになります。
けれど意味合いだけでなく、言葉の生まれた歴史的背景、寓話のストーリーを知ることで、はっきりとその違いを認識できたのではないでしょうか。
朝令暮改はネガティブな使い方をされることが多い言葉でしたが、臨機応変なスピーディーな変化を評価される現代においては、時としてポジティブな使い方をされる場面も出てきました。
言葉の持つ歴史は変化し続け、流れゆくものなのですね。