「忖度(そんたく)」とは、相手の心情を推し量る、相手の気持ちを考えるという意味です。
推量・推測と言い換えてもいいでしょう。
一方、「斟酌(しんしゃく)」とは、相手の心情を考慮して取りはからうという意味となります。
相手を思いやって動くということになります。
同じような意味で使われる二つの語ですが、実は二つの語が持つニュアンスは微妙に異なるのです。
「忖度」の意味
忖度とは、相手の気持ちを推し量る、相手の心情を考える・考慮するという意味です。
たとえば「彼の立場を忖度した」となれば、彼の持つ心情に対して何らかの考慮・推量をしたといえます。
しかし、この語には、相手を推量した後の行動はあまり含まれていません。
「忖」も「度」も「はかる」という意味を持つ漢字ですので、この言葉の意味については、相手のことを考えるという程度にとどめるべきでしょう。
「斟酌」の意味
斟酌とは、相手の気持ちをくみ取って取りはからうという意味です。
「斟」「酌」ともに「くみ取る」という意味の漢字ですが、そこから相手の気持ちをくみ取ってその後の行動に移すという意味になりました。
「年齢を斟酌して罪に問わない」という文であれば、「年齢を考慮に入れた上で罪に問わないことにした」というふうになります。
「忖度」と「斟酌」の用法
忖度と斟酌の違いとしては、行動が含まれるかどうかにかかってきます。
忖度はあくまでも相手の気持ちを推し量るにとどまりますが、斟酌はその後の行動にもつながってきます。
最近、森友・加計問題で「忖度」が出てきてから、現在では二つの語は同じように使われるようになりました。
元々は「忖度」に行動の加減までは問わなかったのですが、実は「斟酌」に相手のことをくみ取って取りはからうという意味がつけられたのもつい100年前くらいのことです。
時代によって変わる「忖度」「斟酌」
「忖度」も「斟酌」も、時代の変化に応じてその意味が変わってきているように感じます。
そもそも二つの語はこれまであまり用いられてきませんでした。
それが政治的な問題がもとで「忖度」が急浮上するようになりました。
しかし、本来であればしっかりとその意味を理解するべきでしょう。
相手の気持ちを忖度する、相手を斟酌して取りはからう。
この違いをおさえていく必要があります。