古くから世界各国の神話や民間伝承の中で恐るべき存在として語り継がれてきた存在、吸血鬼。
時を経て多くの人の手によって描かれた数々の創作作品の中に出没するようになった吸血鬼は、恐怖や病の象徴だったイメージとは一転し、高貴さと耽美さ・人並外れた強さの象徴となり、今やファンタジー作品には欠かせない存在となりました。
日本における認知度も海外に由来する怪物の中では群を抜いて高く、大多数の人は特徴を説明されるだけで「ああ、あれね」とその姿を脳裏に浮かべることができるでしょう。
さてそんな一般的に深く浸透した吸血鬼ですが、大元は世界各国に共通する怪物という他、後世に作られた物語の影響により、呼び名が多数存在します。
今回はその中でも一等ややこしい呼び名である「ヴァンパイア・?吸血鬼?・ドラキュラ」の説明をさせていただきます。
「ヴァンパイアとは」
「ヴァンパイア」とは英語で「吸血鬼」の事です。
その名前の由来はハンガリーの「死にきれない者」を差す言葉とも、トルコ語の「魔女」とクロアチア/セルビアの「飛翔する/吹く」を差すことばが合体して生まれたともされ、その真偽は未だ定かではありません。
世界各国、特に東欧で広く点在する「墓の中から蘇り、人の血を吸い同族にする」という伝承から生み出された怪物で、当時の人々にとっては恐怖の象徴でした。
こう行った伝承が生み出された背景には、西洋は日本と違って土葬が多く、尚且つ伝染病が度々猛威を古い、病による死者が多数出た時代だった、というものがあると思われます。
現代とは違い、医学が発達していない時代。
誤診により死体と見られ仮死状態のまま埋葬される人も多く、飢えと渇きから棺桶の中で激しく暴れる人や、大声で助けを求める人が吸血鬼と見られた可能性も非常に高いと思われます。
他にも「生前に強い恨みを抱いていた者」「生前に大きな罪を犯した者」が吸血鬼になるとされ、また変わった所では「猫に跨がれた死体か吸血鬼になる」とも言われ、絶対に猫に死体を跨がれないようにする為にニンニクで死体を囲んだりもしたようです。
後にキリスト教によって「十字架や聖なるものに弱い」という特徴を付けられ、現在のような耽美なイメージの怪物になりました
「吸血鬼とは」
吸血鬼とは読んで字のごとく、「血を吸う鬼(怪物)」の事です。
西洋には「鬼」という概念がないので、「吸血鬼」という名前の由来は恐らく同じ漢字圏である中国から来たものでしょう。
中国で有名な動く死体の妖怪「キョンシー」が西洋の「ヴァンパイア」と結び付けられた為、そう呼ばれるようになったのだと思われます。
というのも「キョンシー」には動く死体という特徴以外に「人間の血肉を喰らう」「噛まれた者は同じキョンシーになる」という特徴を有しているからなのです。
「ヴァンパイア」が日本で「吸血鬼」と呼ばれるようになった原因のひとつに、同じような存在である「キョンシー」が絡んでいるのではないかと推測されます。
「ドラキュラとは」
「吸血鬼」と言えば?」と尋ねると、大概の人は「ヴァンパイア」か「ドラキュラ」と答える事でしょう。
有名な小説である「ドラキュラ伯爵」の影響もあってか、吸血鬼と言えばドラキュラを差すと思っている方も少なくないかと推測しますが、実を言うと「吸血鬼」=「ドラキュラ」ではありません。
吸血鬼全般を差す「ヴァンパイア」とは違って「ドラキュラ」とは特定の個人を指す言葉になります。
「ドラキュラ」とは15世紀のルーマニアに実在したワラキア公 「ヴラド・ツェペシュ」をモデルに作られたキャラです。
ヴラド公の父がドラゴン騎士団に所属していた為、ルーマニア語で竜を意味する「ドラルク」と呼ばれていた事、その偉大な父の子であるという誇りからヴラド公が「ドラクロア」と名乗っていた事、それに加え当時彼が敵対していたオスマン王国の使者に行った串刺しの刑などが原因で、後の世で「吸血鬼ドラキュラ」のモデルにされてしまいました。
ですが「吸血鬼(ヴァンパイア)」に現代まで続く「高貴」で「紳士的」かつ「貴族的」なイメージがついたのも、ある意味ではドラキュラ伯爵のモデルであるヴラド公のお陰なのかもしれません。
「ヴァンパイアと吸血鬼とドラキュラの違いについて まとめ」
以上「ヴァンパイアと吸血鬼とドラキュラの違いについて」簡潔に紹介させて頂きました。
世界各国に全く同様の伝説・伝承を齎した怪物でありながら、その名前の由来すら定かではない吸血鬼。
まだまだ底知れない謎と魅力に満ち溢れた存在であるということが、これでわかっていただけたであろうと思います。
吸血鬼はこの今回ご紹介した三つ以外にも、様々な呼び名が存在します。
この記事を読んでご興味を抱かれたならば、是非とも調べて見て欲しいと願います。