「クレヨン」は、もともとはフランス語で画材を表す一般名詞です。
一方、「クレパス」は、文具メーカーによって開発された製品です。
画材として商標登録されています。
「クレヨン」は、石鹸・蝋・脂肪・パラフィンなどに各種の顔料を混ぜて棒状に作ります。
そのため硬い素材の物となります。
対して、「クレパス」は油脂分が多く柔らかめに整形された画材です。
「クレヨン」の意味
洋画のデッサンで用いる棒状の絵画用の道具です。
パステル・コンテ・チョークの類です。
また、学童が用いる図画用の道具です。
石鹸・蝋・脂肪・パラフィンなどに各種の顔料を混ぜて棒状に作ります。
「ワックス・クレヨン」「クレオン」とも言います。
本来、「クレヨン」は、Crayonというフランス語です。
フランス語では、単に「鉛筆」を意味します。
日本で云う「クレヨン」は、フランス語では「クレヨン・パステル」と云います。
また、「クレヨン」という言葉は、「クレヨン・パステル」を用いた絵画そのものを指す場合もあります。
「クレパス」の意味
「クレパス」は、「クレヨンとパステルの特徴を取り入れた棒状の画材。
商品名。
」と辞書にあります。
これを開発したのは、株式会社 サクラクレパス(Sakura Color Products Corp.)で、 大阪市中央区森ノ宮中央に本社を置く文具メーカーです。
同社が、パステルの色のよさとクレヨンの定着性のよさを生かした画材を研究開発して「クレパス」は誕生しました。
クレパスが登録商標となっているので、「クレパスと呼べるのはサクラだけです」と同社は説明しています。
このような製品は、世界的には「オイルパステル」と呼ばれています。
「クレヨン」と「クレパス」の用途
「クレヨン」は、発色も美しく透明感があります。
また、クレパスより硬く線描きに向いています。
このような特徴から、幼児にはクレヨンの方が使いやすいと考えられ、幼稚園では画材として一般的に使用されています。
誤って幼児の口に入ったとしても、蜜蝋などで作られたクレヨンは、安全性が高いと考えられているからです。
一方、「クレパス」は、クレヨンの「パステルの混色のしやすさ」や「定着の良さ」を生かした画材として開発されました。
「クレパス」を開発した株式会社サクラクレパスのホームページでは、その特徴を次のように記しています。
『パステルのように自由に混色ができてのびのび描け、クレヨンのように後処理の手間がなく、しかも油絵具のようにべっとり塗れて画面が盛り上がるような描画材料の開発が進められました』
これにより表現の幅が広がりました。
油絵のような濃厚な表現が可能になったので、様々な技法(ぼかし・ひっかき・盛り上げなど)が使えるようになり、専門家も使う画材となりました。
まとめ・クレヨンと山本鼎
大正時代、山本鼎が自由画教育運動を提唱しました。
その運動が小学校で受け入れられるようになると、児童の画材としてクレヨンが普及しました。
鼎は、1916年(大正5年)フランス留学の帰途、ロシアに立ち寄り児童画と農民工芸を見学し注目しました。
日本に帰国後、旧来の手本を模写させるだけの美術教育を批判し、子供に自由に描かせる必要性を説いた自由画運動を始めました。
これとリンクするように大正10年(1921年)、日本でクレヨンの国産品が製造されました。
高価な舶来品だったクレヨンは、廉価なものになりました。
大正14年(1925年)、クレヨンは尋常小学校1学年の図画教材に採用されました。
自由画運動の拡大により学童に写生をさせる教育が始まり、それにつれてクレヨンは普及したのです。